はじめに
「親が亡くなって実家を相続したものの、何から手を付ければよいのかわからない。」
「今は自分の家があるので、実家には誰も住む予定がない。」
「遺品整理も終わっていないし、売るか残すかも決められない。」
このようなご相談をいただく機会が増えています。
少子高齢化が進む日本では、相続をきっかけに空き家となる住宅が増えています。
空き家の数は年々増加しており、社会問題になっています。
一方で、空き家は放置してしまうと管理費や固定資産税がかかるだけではなく、
建物の老朽化や近隣トラブル、資産価値の低下など、さまざまな問題を引き起こします。
「もっと早く相談していれば税金を大きく減らせたのに……」というケースも少なくありません。
今回は「被相続人居住用家屋の3,000万円特別控除(いわゆる空き家特例)」についてご説明しながら、
相続と空き家の問題について解説します。
相続で空き家になるケースが増えている理由
現在
・子どもが就職や結婚で実家を離れている
・親が高齢者施設へ入所した
・親が亡くなり実家に住む人がいなくなった
というケースが非常に多くなっています。
その結果、相続が発生すると実家が空き家となり、そのまま数年間放置されることも珍しくありません。
特に遠方に住んでいる相続人の場合、
「月に一度様子を見に行くのも大変」
「管理会社へ依頼するほどではない」
「兄弟で意見がまとまらない」
などの理由から、時間だけが過ぎてしまうことがあります。
空き家を放置すると起こる5つの問題
① 建物は人が住まないと急速に傷む
住宅は、人が生活することで自然に換気され、設備も使われます。
しかし誰も住まなくなると、下記のようなことが発生することがあります。
・湿気がこもる
・カビが発生する
・シロアリ被害
・配管の劣化
・雨漏り
数年間放置しただけで、修繕費が数百万円になることも珍しくありません。
② 固定資産税は毎年かかる
誰も住んでいなくても固定資産税や都市計画税は毎年発生します。
「いつか売ろう」と思っていても、毎年税金だけを払い続けることになります。
③ 草木が伸び近隣トラブルになる
夏になると雑草は一気に伸びます。
樹木も道路へ張り出し、
・虫の発生
・落葉
・景観悪化
など近隣から苦情になることがあります。
④ 特定空家に指定される可能性
管理されていない空き家は、
自治体から「特定空家等」に指定されることがあります。
改善命令を受けても対応しない場合は、
固定資産税の軽減措置が受けられなくなる可能性があります。
税負担が数倍になるケースもあるため注意が必要です。
⑤ 売却価格が下がる可能性
・雨漏り
・シロアリ
・倒壊の危険
などがあると、
買い手が見つかりにくくなります。
「もっと早く売ればよかった」という声は非常によく耳にします。
空き家を相続したら最初にすること
まずは相続人を確認し、
誰が相続するのかを決める必要があります。
そのためには
・戸籍収集
・相続人調査
・財産調査
を行います。
相続人が複数いる場合は、遺産分割協議を行い、
誰が空き家を取得するか決定します。
その後、
相続登記を行い、正式に名義変更を済ませます。
売却を考えるなら知っておきたい「空き家特例」
空き家を売却する際、
一定の要件を満たすと、
譲渡所得から最大3,000万円を控除できる制度があります。
これが
「被相続人居住用家屋の3,000万円特別控除」です。
この制度を利用すると、
譲渡所得税が大幅に軽減されることがあります。
場合によっては、税金がゼロになるケースもあります。
どのような住宅が対象?
主な要件は次のとおりです。
・亡くなった方が一人で住んでいた住宅
・昭和56年5月31日以前に建築された住宅
・区分所有建物(マンション等)ではないこと
・一定期間内に売却すること
・耐震基準を満たす、または解体して更地で売却すること
なお、制度は改正されることがありますので、最新の適用要件を確認することが大切です。
空き家特例には「売却期限」があります
空き家特例(被相続人居住用家屋の3,000万円特別控除)は、いつでも利用できる制度ではありません。
原則として、相続開始の日(被相続人が亡くなった日)から3年を経過する日の属する年の12月31日までに売却することが必要です。
具体例
例えば、お父様が令和5年(2023年)6月15日に亡くなられた場合、
- 相続開始日:令和5年6月15日
- 3年経過日:令和8年6月15日
- 売却期限:令和8年(2026年)12月31日
となります。
つまり、この例では令和8年12月31日までに売却を完了していなければ、原則として空き家特例を利用することができません。
「まだ売らないから大丈夫」は要注意
相続した実家について、
- 遺品整理が終わっていない
- 兄弟で話し合いがまとまらない
- とりあえず空き家のままにしている
というケースは少なくありません。
しかし、何年もそのままにしていると、気付かないうちに売却期限を過ぎてしまい、3,000万円特別控除が利用できなくなることがあります。
また、空き家を長期間放置すると建物の老朽化が進み、資産価値が下がるだけでなく、管理費や固定資産税などの負担も続きます。
そのため、相続が発生したら、「売る・貸す・住む・解体する」といった今後の方向性を早めに検討することが大切です。
確定申告も忘れてはいけません
空き家特例の適用を受けるためには、売却しただけでは足りません。
売却した翌年に確定申告を行い、この特例の適用を受ける旨を申告する必要があります。
申告をしなければ、要件を満たしていても特例を受けることはできません。
行政書士は税務申告を行うことはできませんが、相続手続きや必要書類の準備、司法書士・税理士・不動産会社との連携を通じて、スムーズな売却と特例の活用をサポートすることができます。
令和6年から制度が使いやすくなった
従来は、売却前までに耐震改修や解体が必要でした。
しかし制度改正により、一定の場合には
買主が売却後に耐震改修や解体を行うケースでも適用できるようになりました。
そのため、以前より利用しやすい制度となっています。
こんなケースは要注意
空き家特例は便利な制度ですが、
すべてのケースで利用できるわけではありません。
例えば、
・期限を過ぎてしまった
・相続人が住んでしまった
・要件を満たしていない
などの場合には適用できないことがあります。
また、
相続開始後に何年も放置しているケースでは、
制度の利用が難しくなる場合があります。
行政書士に相談するメリット
空き家の売却は、
税理士、不動産会社、司法書士など複数の専門家が関わります。
その中で行政書士は、
相続手続き全体をサポートする役割を担います。
「何から始めればいいかわからない」
という方にとって、最初の相談窓口として行政書士をご利用いただくことができます。
相続は「早めの相談」が一番の節税になる
空き家特例は、期限や適用要件が決められています。
「まだ急がなくても大丈夫」
と思っているうちに、利用できなくなってしまうケースもあります。
また、売却だけではなく、
賃貸にする、
リフォームする、
解体する、
家族が住む、
など選択肢はさまざまです。
相続が発生した時点で専門家へ相談することで、
最も有利な方法を選択できる可能性が高くなります。
まとめ
相続した空き家は、放置するほど管理の負担や維持費が増え、建物の価値も下がってしまうことがあります。
一方で、一定の要件を満たせば「被相続人居住用家屋の3,000万円特別控除(空き家特例)」を利用でき、売却時の税負担を大幅に軽減できる可能性があります。
ただし、この制度には適用期限や住宅の要件など細かな条件があり、状況によって利用できるかどうかが異なります。そのため、相続が発生したら早い段階で今後の方針を検討することが重要です。
スイートピー行政書士事務所では、相続人調査、戸籍収集、遺産分割協議書の作成などの相続手続きはもちろん、空き家に関するご相談についても、提携する司法書士・税理士・不動産会社と連携しながらワンストップでサポートしております。
「実家をどうすればよいかわからない」「空き家特例が使えるか知りたい」「相続手続きを何から始めればよいかわからない」という方は、どうぞお気軽にご相談ください。
早めのご相談が、ご家族の大切な財産を守る第一歩となります。